最後の足場

文字数 276文字

 わたしに価値はないのでしょうか
 答えはない
 優しい人間は
 そんなことはないと慰めてくれるし
 厳しい人間は
 そんなことを訊くなと叱るだろう
 でもそれは答えではなく
 関係を踏まえた引っ張り合い
 だからあくまで自分に問うしかない
 わたしに価値はないのでしょうか
 答えはない
 沈黙は解釈に幅を許す
 わたしに価値はない
 それ以外の言葉は
 わたしに禁じられている
 わたしに価値はない
 それ以外の反語は
 わたしに残されてはいない
 ただなにも決めつけない些少な沈黙が
 わたしの生きている最後の足場を崩さない
 いまにも落ちそうな暗闇の断崖に
 つま先立ちで踏ん張りながら
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