崩壊期

エピソード文字数 390文字

 ただただ見つめよう
 この崩壊を
 惨たる衰亡を
 弱者を見殺しにしたツケがまわってきた
 素晴らしいじゃないか
 文明の梯子が
 次々に倒壊していく有り様は
 ソドムとゴモラにも
 終末を楽しむ人間はいた
 終わりに立ち会えるのは光栄なことだ
 いままさに廃虚が生まれようとしている
 人間性の骸
 叡知の抜け殻が
 いたるところから静かな断末魔が聞こえる
 世界の水ぶくれがつぶれる音がする
 眼はまだ見えている
 耳はまだ聞こえている
 社会の傷口が人々のこころに転化し
 病棟の窓が一斉に開け放たれ
 蜂に刺された子どもをだれも助けない
 道ばたに点々と落ちた鱗は
 流せなくなった涙の代替物だ
 老いた魚が陸で嘲笑う
 山あいの向こう側で
 樹が燃えているのが見えるだろう
 あれがおまえの道徳だ
 幸いなるかな幸いなるかな幸いなるかな
 この崩壊に
 安全地帯はない
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