死がつきまとう書物

文字数 321文字

 聖書ほど
 血にまみれた書物はないと
 言われることもある
 そのなかにある言葉が
 どれほど殺戮の種をまき
 どれほど殺戮に加担してきたか
 考えてもみろと

 しかし殺された人間を正確に数えるのが難しいように
 救われた人間を数えるのもまた
 不可能に近い
 死体の算出
 こころの観測
 もし可能だとしても
 救われた人間の数が上回ったところで
 死体は消えないし
 おびただしく血が流されたにも関わらず
 言葉に救われる人間はいる

 死がつきまとう書物
 聖書の罪を
 だれが裁くのかはわからないが
 きっとそのときには
 言葉に救われた人間のひとりとして
 自分も有罪を宣告されるだろう
 魂がまだ
 そのときに残っているのなら
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