怒りと哀しみの詩

エピソード文字数 304文字

 “怒りを歌え、女神(ムーサ)よ”

 世界最古の叙事詩は
 そんなふうに始まる
 怒りこそが
 詩人を言葉に駆り立てたのだろうか
 死への怒り
 世界への怒り

 “死者は誰でも悼まれてよい重さを生者の側にのこして立ち去る”

 “死者は平等であるという思いと、文言は帰するところ自他の鎮魂を基底とするという思いとがこれらの文言を支えたわたしの思想だった”

 二十世紀に生まれ
 二十一世紀に死んだ詩人は
 そんなふうに述べた
 哀しみが
 詩人を言葉に向かわせたのだろうか
 死への哀しみ
 世界への哀しみ

 詩は感情のまだら模様
 怒りは残り
 哀しみは刻まれて
 言葉はいまも
 震えつづけている
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