月夜に傘を持つ理由

エピソード文字数 263文字

 今夜も月に見られている
 夜空をずっとついてくる
 開ききった瞳孔が忌まわしい
 充血の朱色が狂おしい
 (めし)いた月ならば愛せもしようが
 凝視する隻眼(せきがん)はあまりにも禍々(まがまが)しい
 わたしの眼を見つめている
 わたしの胸を覗いている
 わたしの五体を品定めしている
 雲が視線を遮った隙に
 わたしはビル陰にまぎれて息をひそめた
 恋を見失った愚昧(ぐまい)な月から
 滂沱(ぼうだ)の涙があふれ出した
 雨が都会の肌を叩く
 月の涙が街を濡らす
 だからわたしはいつだって
 月夜に傘を持ち歩くのだ
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