言葉のなかの他人

文字数 322文字

 ぼくの言葉は
 なぜだかとても
 醜く思える
 書いたときは
 それほど悪くは
 なかったはずなのに

 自分が嫌いなら
 自分の言葉も
 嫌いになるしかないのだろうか
 少しは好きに
 なれるかと思ったのに

 でも
 自分の言葉には
 他人からの影響が
 明らかに見てとれる
 実際に出会った人々や
 本を通して出会った人々の
 残響のような
 影のような
 切れ端が

 それだけは
 嫌いになれない
 他人を好きになれないという
 病癖を抱えてはいるのに
 自分の言葉で
 嫌いになれない部分は
 自分のなかに残る他人
 というのは
 妙なことだ
 醜い言葉の向こうに
 人々の記憶が浮かぶときだけは
 自分の言葉を
 許せる気がする
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み