不気味な泡

エピソード文字数 363文字

 泡に触れた
 不気味で奇妙な
 時に残酷な
 時に優しい
 無量の想いを
 血にまぎれさせる
 見逃してしまいそうな
 小さな泡
 その泡は
 他ならぬ自分に訪れてくれたのだ
 痛みを映して
 声を嗄らして
 他ならぬ自分に届けてくれたのだ
 報われなかった怒りを
 救われなかった涙を
 人間は死ぬ
 なにも理解せず
 だれも理解できないままに
 それでも途中で終わった人たちの
 遺志の残り火は
 引き継がれることもあるだろう
 泡のように儚い火でも
 泡のように寂しい火でも
 泡
 不気味な泡
 笑わない泡
 街かどの泡
 胸の奥底をよぎる泡
 触れると死が透ける
 触れると生が揺らぐ
 なによりも大切な叫びの聴き手
 案山子の臨終の見届け人
 道化を傍観した狂言廻し
 泡
 不気味な泡
 いつも記憶に触れて痛む
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