年老いた死の臨終

エピソード文字数 272文字

 年老いた死が
 寝床でくたばろうとしている
 死はもう起き上がる気力もない
 誰を殺すこともできない
 老いさらばえた死が
 枯れ枝のような腕を伸ばして
 視線を虚空にさまよわせる
 寝床を取り囲む者たちは
 (わら)いながら死の老醜を見下ろしている
 もうこれからは
 誰一人死ぬことはない
 眼前でいま死にかけている
 呪われつづけた老害をのぞけば
 いままさに死が死にかけている
 生きとし生ける者すべてに憎まれながら
 この世を後にしようとしている

 今夜
 死が死んだ
 世界中が歓喜と祝福でわきかえり
 死を悼む者はいなかった
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック