すこぶる平和

文字数 204文字

 哀しみが許容量をこえてあふれる
 その余剰は涙としては表象されない
 とらえられない哀しみは
 巨大な壁画のように
 一部を切り取ることはできないから
 ただ、眼が死ぬ
 内側に反響した痛みが眼を殺す
 光は永遠に損なわれてしまった
 感情は賦活されえない
 眼の奥がちりちりする
 胸の底がぐしゃぐしゃになる
 けれどなべて世はこともなし
 すこぶる平和
 すこぶる安寧
 表面は
 秩序に擬態する表面は
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