もういちど葬る

文字数 367文字

 自分はなぜ
 子ども時代の想い出にこれほど執着してしまうのか
 なぜ幼年時代を殺し損ねてしまったのか
 たしかに埋葬したはずなのに
 過去を葬ることができず
 未来を葬ってしまった
 十二のみぎりに時系列が歪んでしまった
 遡行的(そこうてき)にぼくは死に向かっている
 正道(せいどう)をたどることがどうしてもできない
 老いさらばえた子どもは見苦しい
 いまぼくはたまらなく醜い
 こころが螺旋型に骨折している
 精神に無意味な負荷をかけつづけている
 もういちどぼくはぼくを葬らなければならない
 跡形もなく
 痕跡も残さず
 魂を塵泥(ちりひじ)に解体しなければならない
 あの時に殺すべきだった亡霊にとどめを刺さなければならない
 その後始末を済ませてから初めて
 ようやくぼくは死んだぼくへの
 弔いの涙を流せるのだろう
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