笑う火葬

エピソード文字数 487文字

 笑うのが好きだ
 他人が笑っているのも好きだ
 でも本当に彼らは笑っているのか
 本当にぼくは笑っているのか
 可笑しいことなんてなにもないこの世界に生まれて

 醜い彫刻のようなぼくの笑い
 儚い雪像のような彼らの笑い
 葬式は満場の笑みに包まれ
 送られる死者は腹を抱えて笑いながら
 喜劇的な焔をあげる
 哄笑の火葬
 嘲笑の火葬
 憫笑の火葬
 死者はなぜあんなにも笑っているのか
 可笑しいことなんてなにもないこの世界に生まれて

 炎に包まれて死ぬ人間は
 まるでダンスを踊っているようだときく
 生命を燃やして踊られるダンス
 魂の燃焼作用
 そこにこめられているあがきも
 怒りも
 哀しみも
 笑いながら眺める者たちには通じない
 観客はなぜあんなにも笑っているのか
 可笑しいことなんてなにもないこの世界に生まれて

 笑うのが好きだ
 笑っていないと死にそうだ
 偽物の笑いなんか大嫌いだ
 腹の底から笑おう
 大口を開けて間抜けに笑おう
 黎明も真昼時も夕闇も夜更けも
 狂ったように笑って過ごそう
 可笑しいことなんてなにもないこの世界に生まれて
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