刑務所とスペースコロニー

文字数 461文字

 独りの時間を持てない苦しさと
 だれからも求められない寂しさを
 いつも(はかり)にかけている

 刑務所でいちばん辛かったことは
 孤独を許されなかったことだと
 経験者は語っていた
 そこで求められているのは
 人間としての彼ではなく
 作業単位としての彼だった
 外面の孤独は許されなくとも
 内面はひたすらに孤独だった
 ひたすらに貧しい孤独だった
 娑婆(しゃば)での孤独はもっと豊かで自由だと
 その経験者は語っていた

 スペースコロニーでいちばん寂しかったことは
 他者との接触を許されなかったことだと
 経験者は語っていた
 レベル7の汚染によって
 厳重に隔離された単身居住者
 もうその肉体は諦めるしかないと
 告げられたときの寂寥感
 彼の遺体は除染処置を施され
 粉々にされて宇宙に放り出された
 いまの彼は記憶を移植されたクローンだと
 その経験者は語っていた

 地球において
 娑婆において
 自由人であるはずのぼくにおいても
 孤独は由々しき関心事であり
 天秤はいつも揺れ動いている
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