残像がそこかしこ

文字数 256文字

 残像が
 そこかしこに散らばっている

 公園のベンチで
 空を眺めた
 人を待っていた
 胸が高鳴っていた
 恋しかった

 人の家の門前で
 たむろして話した
 門柱に寄りかかった
 焚き火を囲む群れみたいだった
 快晴の初夏だった

 緩い坂道で
 二人きり歩いた
 雨上がりだった
 傘をくるくるとまわした
 水の(つぶて)が綺麗だった

 本屋の片隅で
 秘密めかして語らった
 好きな詩集を指差した
 趣味の一致に微笑んだ
 埋まらない距離を錯覚した

 残像が
 空の下
 街上に
 そこかしこ
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