祖父は言った

エピソード文字数 378文字

 祖父が死ぬ間際にこう言った
 オマエハダレナンダ
 祖父はもう誰を見ても思い出せなかったので
 それ自体は不思議ではなかった

 男児しか授からなかった祖父は
 息子の嫁さん(ぼくの母)から贈り物をもらった夜に
 落涙して言った
 オンナノコハヤサシイモノダ
 死んだ後に祖母が洩らすまで
 息子の嫁さん(ぼくの母)さえ知らない言葉だった

 幼い自分が
 祖父の身体の欠けた部分について
 疑問をぶつけたときにこう言った
 ネズミニカジラレタンダヨ
 欠けた由来も
 欠けた人生でなにを想ったのかも
 その言葉の他に祖父の口から聞くことはなかった

 祖父が死ぬ間際にこう言った
 オマエハダレナンダ
 じいちゃん
 なにかしら近しいものを感じとっていたじいちゃん
 死んだいまなら答えを知っていますか
 ぼくは誰で
 ぼくにはなにが欠けているんですか
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック