欠けた記憶
文字数 646文字
いつ果てるともしれない
子どものとめどないおしゃべり
相槌をうつと
反応が嬉しいのか
なおも話の種は尽きない
思いつくままに
曲がりくねるままに
時間も気にせず
目的地も定めず
ただひたすらに
つたない言葉で語りつづけている
ひたすらに
いちばん古い記憶はどんな記憶かと
たずねてみた
母親と別れて
泣いていた時だそうである
それはとてもよくわかる答えだ
ぼくはたしか幼少時
もっとも古い記憶が三つあった
二つの情景はいまでも思い出せる
あとの一つは
忘れてしまった
いつかまた思い出せるだろうか
死ぬまでに
子どもはずっと無防備なまま
なおもしゃべりつづけている
不思議なくらいに懐いてくれているこの子どもが
どんなふうにぼくを記憶するのか
どんなふうにぼくを忘れるのか
よくわからない
ぼくはこの子どもをどんなふうに記憶するのか
どんなふうに忘れるのか
死ぬまでに
欠けた記憶
初源の記憶
そんな大切なものさえ忘れてしまえるなら
この世に忘れられない記憶なんて
ぼくにはきっとないだろう
あの人のことも
死ぬまでに
しゃべるだけしゃべった後に
子どもは寝息を立て始めた
どんな夢をみているのだろう
夢のなかでも
しゃべりつづけているのかもしれない
ぼくは無言で起きたまま
これまでに何度も反芻 した
記憶に刻まれた優しい声を
忘れないうちにまた思い出していた
死ぬまでに
子どものとめどないおしゃべり
相槌をうつと
反応が嬉しいのか
なおも話の種は尽きない
思いつくままに
曲がりくねるままに
時間も気にせず
目的地も定めず
ただひたすらに
つたない言葉で語りつづけている
ひたすらに
いちばん古い記憶はどんな記憶かと
たずねてみた
母親と別れて
泣いていた時だそうである
それはとてもよくわかる答えだ
ぼくはたしか幼少時
もっとも古い記憶が三つあった
二つの情景はいまでも思い出せる
あとの一つは
忘れてしまった
いつかまた思い出せるだろうか
死ぬまでに
子どもはずっと無防備なまま
なおもしゃべりつづけている
不思議なくらいに懐いてくれているこの子どもが
どんなふうにぼくを記憶するのか
どんなふうにぼくを忘れるのか
よくわからない
ぼくはこの子どもをどんなふうに記憶するのか
どんなふうに忘れるのか
死ぬまでに
欠けた記憶
初源の記憶
そんな大切なものさえ忘れてしまえるなら
この世に忘れられない記憶なんて
ぼくにはきっとないだろう
あの人のことも
死ぬまでに
しゃべるだけしゃべった後に
子どもは寝息を立て始めた
どんな夢をみているのだろう
夢のなかでも
しゃべりつづけているのかもしれない
ぼくは無言で起きたまま
これまでに何度も
記憶に刻まれた優しい声を
忘れないうちにまた思い出していた
死ぬまでに