【乱入自由】今岡英二の「食べ歩き万歳!」

03話② 貿易都市・堺の「プノンペン」

エピソードの総文字数=2,711文字

小一時間経過後。

eijivocal23

おれはしょうきにもどった!
正気に戻るまで、けっこうかかったけどな。
で、本題の「プノンペン」なんですが、これ、どういうことなんです?
どういうこととは?

タイトルが意味不明すぎるんですけど、3話目にしてもう破綻してしまったんですか?


なにげに辛辣じゃのう……(泣)

いえ、読者の気持ちを代弁したまでですので。
たしかにタイトルだけではわからんよのう。実はこれ、カンボジアの首都の名前なんじゃ。
それはわかります。
わかっとるなら聞くなや。
いえ、だからこれのどこが食レポなのかって聞いてるんですよ。
ああ、そういうことか。それならそうと早う言え。

わしは察しがええことで有名なんじゃ。

駄目だ、こいつ。早くなんとかしないと。
あ、なんか言うたか?
いえ、別に。で、タイトルの真意を教えていただけますか?
ああ、これな。実はこれがそのまま店名なんよ。
ってことは、今回はカンボジア料理かなにかですか?
いや、ラーメン。
はぁ? 
だから、ラーメンなんだって。
で、そこの店名はもういいとして、そこの名物はなんなんだよ。
プノンペン。
プノンペン。
いや、私も武松さんも聞こえてはいますからね。
ってことはなにか。プノンペンでプノンペンを食うのがいい、とこう言いたいわけか。
おう、理解が早いようでなによりじゃ。
すいません。言っている意味がさっぱりわかりません。説明をしてください。
まあ、そうなるわの。かいつまんで言うと、「プノンペン(店名)」「プノンペン(名物)」だけを出している店ってわけなんだわ。正確には、ラーメンの一種である「プノンペンそば」と麺なしの「プノンペン」だけを出してるってところか。あとは付け合せのライスとチャーシューしかない。
で、その「プノンペンそば」ってどんなものなんですか?

実物を見てもらったほうが早いじゃろうな。

これが「プノンペンそば」じゃ!

スープは鶏ガラベースの醤油スープじゃが、かなりあっさり系。最初はいうほど辛くはないんじゃが、飲んどるうちに体がかなりポカポカしてくる、味わい深いスープなんじゃ。
これ具材はなんなんですか?
セロリトマト豚バラ、それと決め手なのは杓子菜じゃな。
ラーメンにしてはかなり変わった具だな。特に杓子菜ってのはなんだ?
ああ、これはあまり関西では流通していない野菜でな。この店はこの杓子菜のために、わざわざ自家農園で栽培しとるんよ。
そこまでしますか。
これが店主の行き着いた最高の具材なんじゃそうな。そもそもこの店名も、先代の店主が若い頃、インドシナ半島の復員兵が屋台で出していたラーメンの味にほれ込んで、それを自分なりに研究に研究を重ねて復元させた味、それを反映させたものなんじゃと。
なるほど、それで「プノンペン」ってわけか。
そういうこと。この店、関西ではたびたびTVや新聞にも取り上げられている、知る人ぞ知る名店なんよ。
ってことは、やはりけっこう並ばれるんです?
うむ。しかも、場所が住宅地の中にあるから、しっかり地図を見ながらじゃないと、初見だとまずたどり着けんこと請け合いじゃの。
そういうところにわざわざ行ったのか。
おう、わしはその土地にいったら、なるべくそこで日常的に食われとるもんを食うことにしとるけえな。それこそが取材の醍醐味じゃ。
じゃあ、イギリスにもぜひそのうち。
イギリス飯か……。うちの弟がイギリスのヴィダルサスーンに美容師修行に行った際、現地スタッフに「このままここで働けよ」言われたらしいんじゃが、「飯まずいけえ、修行終わったら帰る」言うて、本当に修行終わったら速攻で帰ってきたぐらいじゃけえなぁ。
イギリス飯はしょうがねえよな。
…………(無言の涙)
ま、そんなわけで、イギリス飯とは比較にならんぐらいの絶品「プノンペン」。みなさんも堺に行かれた際はぜひ一度食うてみてつかあさい!

これは興味深い!

味がなかなか想像できないですね。食べたい……!!


ところでイギリスは本当にメシがまずいんですね。本場のフィッシュアンドチップス、気になるのですが……。

イギリスとか海の幸に囲まれてるはずなのに、

なんでまずいんでしょうねえ?

奈良は内陸部なので新鮮な食材が手に入らないという事情があるのですが……うーん。

それについては私から説明いたしましょう。実はイギリスの料理がまずくなったのは、産業革命時代の負の遺産といわれているんです。
産業革命っていうと、ちょうどニコルのいる時代ってことじゃよな?
はい、実は「フィッシュ&チップス」は19世紀の中ごろ、おおよそ1860年代頃からあったといわれていますが、それがはやったのは「手軽であること」「大量生産が可能であること」「安価であること」などの要因が挙げられます。いずれも「産業革命によって、大都市に大量の労働力が流れ込み、食事を作る時間さえもない彼らが、安くて高いカロリーのものを求めた結果、それが大流行した」といわれています。
つまり現代のファーストフードと同じってことか。
そうですね。また、産業革命によって大輸送が可能となり、原材料である魚やジャガイモの輸送がロンドンをはじめとした大都市に輸送しやすくなったというのも、大きな要因といわれています。もっとも新鮮なものは上流階級の人たちのもとに届いたでしょうが、そうでないものは労働者階級の方に流れたともいわれています。

じゃあ、けっこう質の悪いものも多かったんじゃないのか?


ええ、その結果、生まれたのが「とりあえず火をしっかり通す」「焦げるぐらいまで揚げる」「麺もでろでろになるまでゆでる」などの過剰なほどの調理方法です。素材を生かした調理方法がこのとき廃れたともいわれています。いずれにせよ、労働力をあたかも工場の歯車のように使ったことが、イギリスの食文化衰退を招いたといえるでしょうね。


星崎さん、まきえさん、こういった解説でよろしかったでしょうか?


詳しい解説ありがとうございます。
ありがとうございます!

新宿で食べた美味しいフィッシュ&チップスは、もはや別物だったんですね。

いえいえ、どういたしまして。

ちなみにイギリスではその頃からの名残で、古い油をとことんまで使う店も多いので、あまり味がよくないフィッシュ&チップスも多いです。イギリス人ですら「日本で出されるフィッシュ&チップスはイギリスのものとは別物」と言うぐらいですから、比べるべくもないでしょう。

自国民にすらまずいと思われるイギリス飯……恐ろしい……(;'A`)
うちの近くにはフランスがあるぶん、誤魔化しが聞かないんですよ(苦笑)

実際イギリスの料理用語はフランス語からの借用がほとんどですからね。それだけ自国の料理に自信がないってことなんです。

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