84話  【変】福井「岩佐又兵衛の墓」

文字数 1,496文字

二日連続で福井の名物を紹介したついでに、

福井の隠れた名所でも紹介しちゃろうかのう。

隠れた名所?
もしかして誰かのお墓とかですか?
ほう、ようわかったのう!
またか……
またかとはなんじゃ、またかとは!!
前にも似たようなことあったろうが……
先人の遺徳を偲ぶことは大事なことじゃろうが!
それはそうかもしれませんが……
で、誰のお墓を紹介しようってんだ?
岩佐又兵衛って知っとるかの?
岩佐又兵衛?
誰だ、それ?

江戸初期に活躍した絵師よ。

国宝「風神雷神図」を描いた俵屋宗達と並んで江戸初期を代表する大和絵絵師じゃな。

けっこうすごいやつなんだな。
この人が残した作品で、なにか有名なのはありますか?

ほうじゃな。

まっさきに挙げられるのは「洛中洛外図屏風」かのう。

舟木家が残しとったことで、他の「洛中洛外図屏風」と区別するため、

通称「舟木本」と呼ばれとる代物じゃ。

これはこれで国宝に指定されて、東京国立博物館に所蔵されとるわ。

国宝!!
それはすごいですね!

ほうじゃろ。

近年の研究では、左隻は弟子が担当したと見られるとるんじゃが、

一方で、又兵衛自身が制作に関与したというのも有力な説になっとるけえ、

岩佐又兵衛のすごさはなんら変わるまいてな。

そうでしょうね。

ちなみに岩佐又兵衛は町民出身でのうて、

武士出身、しかも大名だった者の血をひいとるといわれとるんじゃ。

誰ですか?

織田信長の有力家臣で、その後謀反を起こして滅ぼされた荒木村重よ。

荒木村重って、たしか謀反を思いとどまる様に説得に来た黒田官兵衛を幽閉して、その後、織田信長に敗れて、落城間際に逃れたって人ですよね?

ほうなんよ。

で、その落城の際、一族が皆殺しの目にあっとるんじゃが、

一人の乳母が幼子を抱いて逃げたといわれとるんじゃ。

その荒木村重の幼子じゃったんが、岩佐又兵衛ということなんよ。

すげえエピソード満載の絵師なんだな。

古今東西でも、これほどまでに波乱に満ちた絵師もそうおるまいてな。

ちなみにこのへんの話は、漫画『へうげもの』でもけっこう描かれとるけえ、興味ある人は見てほしいもんじゃな。


でも、荒木村重のお城ってたしか西の方でしたよね?

ほうじゃな。

荒木村重の居城・有岡城は摂津、いまの兵庫県伊丹市のあたりじゃな。

ついでにいえば、黒田官兵衛の当時の主君・小寺政職は播磨の御着城、

こっちは現在の兵庫県姫路市あたりじゃのう。

いわばお隣さんじゃったわけなんよ。

なので、黒田官兵衛が説得に行ったというのは納得なんですが、

なんで西の方の出身だった岩佐又兵衛のお墓が福井にあるんでしょうか?

だいぶ離れていますよね?

それはじゃな。

絵師として大成した後、福井藩主・松平忠直に招かれて、

福井の方に移住したけえなんよ。

もっとも、福井では20年以上を過ごした後、

今度はさらに将軍・秀忠にも招かれて、江戸でも10年以上を過ごしたんじゃがな。

じゃあ、最晩年は江戸で過ごしたってわけか?

そういうことになるのう。

ただ、家族はずっと福井におったけえ、菩提寺は江戸じゃのうて、

福井の方になったいうことなんじゃ。

そして、これがその墓所というわけなんじゃ!

わかってたけど……
やはり行ってましたか……

当然じゃ!

ちなみに通常、こういう偉い人の墓は墓地の奥まったところにあったりするもんなんじゃが、福井県の興宗寺にある岩佐又兵衛の墓は、寺の道路に面したところにあるんで、わりと見に行きやすいのも特長じゃな。

マジかっ!?

おう。

福井城からは十数分のところにあるけえ、セットで見に行くのも悪くはなかろうて。


そんなわけで江戸時代初期を代表する絵師「岩佐又兵衛の墓」、みなさんも福井に行った際にはぜひ立ち寄ってみてつかあさい!!

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登場人物紹介

今岡英二公式ツイッター(一日トリビアつぶやき中)



■今岡英二(天使)


最近「小説のキャラよりキャラが立っている」といわれる、同コラボノベルの作者。

無駄に行動力だけはある。

なお、この絵は作者がバンド活動をしていたとき、知り合いのイラストレーターが作成してくれたお気に入りの一枚。現在はバンド活動から離れ、体重が増加したため、ここまでかっこよくはない。


「上京して十数年経つが、広島弁が抜けりゃあせんのう(笑)」とは本人の弁。


■今岡英二(悪魔)


悪魔イラストの割りに、天使と対立しているわけでもない。広島生まれ・広島育ちの根っからのカープファンだが、近年カープが人気しすぎて、年一回の帰省でも現地で野球が見れないのが最近の悩み。


「ええんじゃ。昔の貧乏な頃のカープに比べりゃあのう。みんなが見に来てくれて、潤うようになったカープがありゃあ、それだけでええんじゃ……」とは作者のコメント。

■今岡英二(お守り)


歴史オタク・読書オタク・漫画オタク・勉強オタクな今岡英二の変態担当、作家・ライター担当。自身の小説キャラを辟易とさせるなど、悪魔よりも悪魔っぽい存在。


「なんでそんなことまで知っているんだ」「ふつうそこまで知りませんよ」とキャラにつっこまれても、「勉強したけえの」と言えば大抵のことは許されると思っているなど、余計に性質が悪い。

ニコル・クロムウェル(Nicol=Cromwell)


「Dr.ニコルの検死FILE」の主人公。

作者・今岡英二のつっこみ役A。紳士然とした丁寧な語り口だが、作者に対してはたまに辛辣な物言いを吐く。たぶんストレスがたまっているんだね。

武松(ぶしょう)


「大宋退魔伝」の主人公。

作者・今岡英二のつっこみ役B。そろそろ「左近ちゃん 見参!」の三成にでもつっこみ役を代わってもらいたいと思っているが、同作のキャラアイコンが家紋なので却下され、最近やさぐれ気味。きっとストレスがたまっているんだね。

石田三成(いしだ・みつなり)


「左近ちゃん 見参!」の主人公。

同作ではいいツッコミ役を果たしていたが、作者の「キャラアイコンにしっくりくるのがなかったけえ、家紋にした」という一言のせいで、ここでは活躍の場を与えられないという憂き目に遭う。ごめんな。


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