88話③ 長浜市の隠れた名店「十割蕎麦 坊主bar 一休」

文字数 1,366文字

それで、そのデザートというのは?

ああ。

それはここの「そばがき(500円)」なんじゃ。

そばがき?

名前は聞いたことあるんですが、どういう料理なんですか?


まちまち。


おいっ!!

いや、そばがきいうんは、ほんとにいろいろあるんよ。
そうなんですか?

ああ。前提としてまず知っておいてもらいたいのは、みんながイメージする蕎麦は、正確には「蕎麦切り」いうもんじゃということじゃな。

これは江戸中期頃にできた食べ方でな。

池波正太郎の「おとこの秘図」という作品の中でも、主人公・徳山五兵衛秀栄が少年の頃、忠臣蔵で有名な堀部安兵衛に「いま流行りの蕎麦切り」をごちそうになり、そのおいしさに目を輝かせるいうシーンがあるんじゃ。

ほんと、よく知ってんな……
勉強したけえな。
そうだろうな……
では、それ以前に蕎麦はなかったんですか?

いや、あった。

そもそも蕎麦の歴史は古くてな、5世紀の文献にも登場しておるが、そもそも縄文期の土器からも蕎麦を食うておった形跡が見つかっておるんで、それこそ有史以前から蕎麦食の文化があったであろうと言われとるんじゃ。

マジかっ!?

おう。

そして、その蕎麦の食べ方の一つ「そばがき」は、少なくとも鎌倉期には登場しとったといわれとるな。

なので、少なくともそばがきは、そのころにはすでにあったということなんじゃ。

それ、どういう食べ方なんですか?

蕎麦粉を水で練って餅状にする。

これをそのまま食べてもええし、汁ものに入れてもええ、長野県の松本市では汁粉の餅の代わりにそばがきを入れて食べるいうところもあるそうな。

ほんと千差万別いう感じじゃな。

それでまちまちと言ったのか。

そういうこと。

ちなみにわしは汁物に入れて茹でる、すいとんっぽいものを見たことがあったんで、そういうのをそばがきと呼ぶんじゃと思っとったんよ。

では、ここのそばがきは違うんですか?

ああ、違う。

ここのそばがきはこんな感じじゃ!

これはな、蕎麦粉に熱湯をかけて混ぜ、粘りがでた状態のものを食べる「椀がき」と呼ばれるものの一種でな、なかなかに湯の加減がむずかしいそうな。

で、この粘り気が出たそばがきを、塩やわさび、またはみたらし団子のたれのようなものに付けて食べる。

これがこの店の食べ方なんよ。

ほう、甘味というわけか!
それはそれでおいしそうですね!

ああ。

さっきの十割蕎麦も旨かったが、熱湯で練るそばがきは十割蕎麦以上に、蕎麦の風味が強く出とったわ。

タレで食うてみたり、そのまま食うてみたり、塩で食うてみたり、わさびで食うてみたりと、いろいろ試してみたが、どの食べ方でも蕎麦本来の味を味わえて、本当に満足いくもんじゃったわ。

かなりの褒めようですね。

ほうじゃな。

なにしろ十割蕎麦を食い終わった時、「けっこう食ったな。これはそばがきまで入らんかもしれんな」思うとったもんなんじゃが、そばがきを食った瞬間、「やべえ! これもっと食いてえ!」と思ってしまったけえのう。

おかげで食い終わった時、ちと苦しかったもんじゃて(笑)

そこまで褒めるか……

そのぐらい旨かったけえな。

やはり蕎麦は打ち立て、作り立てが一番いうことよな!


そんなわけで、蕎麦本来の味を感じさせてくれる隠れた名店「十割蕎麦 坊主bar 一休」、みなさんも長浜市に行かれた際は、ちょっと郊外まで足を延ばしてみて、ぜひこの名店を訪れてみてつかあさい!

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登場人物紹介

今岡英二公式ツイッター(一日トリビアつぶやき中)



■今岡英二(天使)


最近「小説のキャラよりキャラが立っている」といわれる、同コラボノベルの作者。

無駄に行動力だけはある。

なお、この絵は作者がバンド活動をしていたとき、知り合いのイラストレーターが作成してくれたお気に入りの一枚。現在はバンド活動から離れ、体重が増加したため、ここまでかっこよくはない。


「上京して十数年経つが、広島弁が抜けりゃあせんのう(笑)」とは本人の弁。


■今岡英二(悪魔)


悪魔イラストの割りに、天使と対立しているわけでもない。広島生まれ・広島育ちの根っからのカープファンだが、近年カープが人気しすぎて、年一回の帰省でも現地で野球が見れないのが最近の悩み。


「ええんじゃ。昔の貧乏な頃のカープに比べりゃあのう。みんなが見に来てくれて、潤うようになったカープがありゃあ、それだけでええんじゃ……」とは作者のコメント。

■今岡英二(お守り)


歴史オタク・読書オタク・漫画オタク・勉強オタクな今岡英二の変態担当、作家・ライター担当。自身の小説キャラを辟易とさせるなど、悪魔よりも悪魔っぽい存在。


「なんでそんなことまで知っているんだ」「ふつうそこまで知りませんよ」とキャラにつっこまれても、「勉強したけえの」と言えば大抵のことは許されると思っているなど、余計に性質が悪い。

ニコル・クロムウェル(Nicol=Cromwell)


「Dr.ニコルの検死FILE」の主人公。

作者・今岡英二のつっこみ役A。紳士然とした丁寧な語り口だが、作者に対してはたまに辛辣な物言いを吐く。たぶんストレスがたまっているんだね。

武松(ぶしょう)


「大宋退魔伝」の主人公。

作者・今岡英二のつっこみ役B。そろそろ「左近ちゃん 見参!」の三成にでもつっこみ役を代わってもらいたいと思っているが、同作のキャラアイコンが家紋なので却下され、最近やさぐれ気味。きっとストレスがたまっているんだね。

石田三成(いしだ・みつなり)


「左近ちゃん 見参!」の主人公。

同作ではいいツッコミ役を果たしていたが、作者の「キャラアイコンにしっくりくるのがなかったけえ、家紋にした」という一言のせいで、ここでは活躍の場を与えられないという憂き目に遭う。ごめんな。


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