13話① 東京・西新井の「お大師だんご」

エピソード文字数 1,736文字

今日はめずらしく和菓子なんですね。
おう、たまにはそういう手土産品の日があってもええかの思うての。
誰かにもらったのか?
いや、自分で買うてきたやつじゃ。
西新井で買ってきたんですか。いつ行ってきたんです?
昨日。
は?
半日ほど前。
ほやほやじゃねえかっ!

このネタ、ついこの前も見ましたけど、もしかしてやはりネタ切れなんですか?

それだけはないけえ安心しんさい。ただ紹介するネタは新鮮なほうがええかのと思うただけじゃ。ほれ、これが行ってきた証拠じゃ。

本当に行ってやがる……。

にしても、なんで行ってきたんだ?

おう、わしは今年厄年なんでな。ちゃんと厄払いに行っておこうと思ったんじゃ。こういうのは早い方がええけえな。
厄払い? ああいうのって迷信じゃないんですか?
うむ、迷信じゃろうな。
おい!
そう叱るな。迷信ではあるが、これはいわば自分への戒めでもあるんじゃ。
戒め?
おう、なにせちゃんと厄払いをやっておきゃあ、その後なんかあっても「厄払いしなかったせいだ」とは言えん。むしろ自分の努力が足りんかったいうだけの話になる。つまり厄年の厄払いは、自分に言い訳させんための心構えのためのもんじゃと、個人的には思っとるんよ。
なるほど。いいこと言いますね。

……たしかにいいこと言ってるっぽいけど、この前、神社に初詣行ったばっかりじゃなかったか?


まぁ、あれはあれ、これはこれよ。
節操がないんですね……。
まあのう。じゃけえこの前も言うたじゃろ。うちは安芸門徒と呼ばれる代々の浄土真宗門徒じゃが、わし自身はそこまで熱心な仏教徒でもないと。
たしかに言ってたけどよぉ……。
それにここ西新井大師は真言宗であって、うちの浄土真宗とはまた宗派が違うけえの。その時点でお察しというもんじゃろう(笑)。
そんなんでいいのか?

ええんじゃ。だいたい神社とお寺は宗教こそ違うが、わりと共存しとるもんなんでな。


そうなんですか?
イギリス人のニコルと中国人の武松にはわかりにくい観念じゃろうがの。日本はそういう国なんじゃ。日本人でも神社と寺の明確な差異を説明できんやつもおるぐらいなんじゃけえのう。
いや、さすがにそれはねえだろ!
ほうかのう。じゃあ、寺の中に神社があったり、神社の中に寺があったりする言うたら、どう思う?
そんなことがあるんですかっ!?

ああ、あるで。明治の「廃仏毀釈(はいぶつきしゃく)」でだいぶ減りはしたんじゃがの。小さいところではいまだに残ったりしとるんじゃ。

寺の中に小さな神社、たいていは作物の実りを祈る「稲荷神社」か、火事予防を祈る「秋葉神社」であるところが多いが、そういった小さいお社を境内に残しとるお寺さんは多いもんよ。


あるものなんですねぇ……。
おう、日本の宗教観の不思議なところじゃ。ちなみに一般社会における寺と神社の主な役割って、わかるかの?
寺は葬式とかだろ?
さすが仏門に入った身じゃの。それぐらいはわかるか。
馬鹿にするんじゃねえ!
じゃあ、神社の方は?
初詣はさっき出ましたから、一般的には結婚式とかなにかの祈願とかになるんでしょうか?
おう、そんなところじゃ。そういうわけじゃけえ、神社は死の穢れを嫌うんよ。むろん神道系の葬式いうのもあるにはあるんじゃが、わりと簡素な感じなんでな。平安時代に神社専門のお寺いうのが作られたんじゃ。
そんなのがあるのか?
ある。ただでかい神社の中にあったそういうお寺は大抵打ち壊しにあったがの。ただ、その名前はいまでも苗字として残っとるんじゃ。
苗字?
おう、「神宮寺」いう苗字がその名残じゃの。
マジかっ!?
ああ。もっとも、今でも「神宮寺」を名乗る寺は多少ではあるが、残ってはおるんじゃがの。そういうのは大抵、神社の境内にあったものじゃのうて、神社の境外にあった「付属の寺」いう存在じゃな。廃仏毀釈があまり盛んではなかった地域に、わずかながら残っとるよ。
なるほどなぁ……。
それにしてもいつもながらのことですが、よくこんなこと知っていますね。
勉強したけえな。
いや、どう考えても学校やなんかで教えてくれることでもねえだろ!
そこはそこ、自分なりに研究したんじゃ。
「変人の今岡先生ならやりかねない。実際やってきたんだろうなぁ」と最近思うようになりました。
そんなに褒めんなや(照)。
褒めてねえからな!

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登場人物紹介

今岡英二(天使)


最近「小説のキャラよりキャラが立っている」といわれる、同コラボノベルの作者。

無駄に行動力だけはある。

なお、この絵は作者がバンド活動をしていたとき、知り合いのイラストレーターが作成してくれたお気に入りの一枚。現在はバンド活動から離れ、体重が増加したため、ここまでかっこよくはない。


「上京して十数年経つが、広島弁が抜けりゃあせんのう(笑)」とは本人の弁。


今岡英二(悪魔)


悪魔イラストの割りに、天使と対立しているわけでもない。広島生まれ・広島育ちの根っからのカープファンだが、近年カープが人気しすぎて、年一回の帰省でも現地で野球が見れないのが最近の悩み。


「ええんじゃ。昔の貧乏な頃のカープに比べりゃあのう。みんなが見に来てくれて、潤うようになったカープがありゃあ、それだけでええんじゃ……」とは作者のコメント。

今岡英二(お守り)


歴史オタク・読書オタク・漫画オタク・勉強オタクな今岡英二の変態担当、作家・ライター担当。自身の小説キャラを辟易とさせるなど、悪魔よりも悪魔っぽい存在。


「なんでそんなことまで知っているんだ」「ふつうそこまで知りませんよ」とキャラにつっこまれても、「勉強したけえの」と言えば大抵のことは許されると思っているなど、余計に性質が悪い。

ニコル・クロムウェル(Nicol=Cromwell)


「Dr.ニコルの検死FILE」の主人公。

作者・今岡英二のつっこみ役A。紳士然とした丁寧な語り口だが、作者に対してはたまに辛辣な物言いを吐く。たぶんストレスがたまっているんだね。

武松(ぶしょう)


「大宋退魔伝」の主人公。

作者・今岡英二のつっこみ役B。そろそろ「左近ちゃん 見参!」の三成にでもつっこみ役を代わってもらいたいと思っているが、同作のキャラアイコンが家紋なので却下され、最近やさぐれ気味。きっとストレスがたまっているんだね。

石田三成(いしだ・みつなり)


「左近ちゃん 見参!」の主人公。

同作ではいいツッコミ役を果たしていたが、作者の「キャラアイコンにしっくりくるのがなかったけえ、家紋にした」という一言のせいで、ここでは活躍の場を与えられないという憂き目に遭う。ごめんな。


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