118話① 佐賀武士の名残「佐賀競馬のパドック」

文字数 1,101文字

田舎の競馬場なのに、昨日紹介した以上のことがあるのか?
ないのう。
おいっ!?
どういうことですか!

おいおい。

お前らはほんまに早とちりが過ぎるのう。

わしは「昨日紹介した以上のこと」がない言うただけで。

競馬場全体ほどじゃあありゃあせんが、

それでも見るべきところはちゃんとあるけえ、

心配しんさんな。

見るべきところ?
どういうところですか?
お前さん方、競馬場にはパドックいうもんがあるのは知っとるか?
それぐらいなら……
レースの前に馬を見るところだっけか?

ほうじゃな。

実は佐賀競馬のパドックは、

他の競馬場と違ってちと変わっとるんじゃ。

変わってる?

おう。

これを見てもらえれば、一目瞭然じゃろうな。

ほれ、これがそうよ!!

実はパドックのスタンドが、古めかしい赤レンガ造りでな。

その上、出走馬掲示板はいまだに手書きなんじゃ。

マジだっ!!
かなりのアナログですね。

ほうなんよ。

基本的にいまはほとんどの競馬場が電光掲示板で、

一部にまだパネル式のところもあるにはあるが、

黒板に手書きいうんはここぐらいになっとるんじゃ。

貧乏なのか?

地方競馬じゃけえ、貧乏じゃろうなぁ。

しかし、これがまた味があってええんじゃ。

わしはむしろこういうのが好きじゃな。

お前さんらしいぜ……
で、変わったところって、それぐらいですか?

いや、実はもう一つあるんじゃ。

これは競馬好きにしかわからんかもしれんが

お前らは見て、わかるかのう?

わかるか!!

一応さっきの写真でも答えは写っとるんで。

わかりませんって……
降参だな……

しょうがないのう。

それはパドックが右回りなところなんよ。

そんなところが!?

おう。

基本的に日本の競馬場では、パドックは左回りいうことになっとるんじゃ。

右回りなのはここ佐賀競馬場ぐらいのものなんよ。

ほれ、参考にこれが以前紹介した盛岡競馬場のパドックじゃ。

な?
マジだ……
なにか理由があるんですか?

ああ。

もともとここは佐賀藩がおさめとったところ、いうことじゃな。

佐賀藩?

おう。

「武士道とは死ぬことと見つけたり」で有名な『葉隠』に代表されるように

佐賀の男子には「常に行動の中に武士としての心を持っていろ」という精神が

これでもかと強く根付いとったんじゃ。


で、その結果、馬を引く際にも常に刀を抜きやすいよう

左手で手綱を持って馬を引く習慣が残ってな。

それでパドック周回が右回りになったということなんじゃ。

佐賀独特の伝統なんですね。

そういうことよ。

むろんいまでは馬を右手で引く係りの人も出てきよるけえ、

だいぶその風習自体は薄れてきとるんじゃが、

いまだ右回りの習慣だけは残っとるいうことなんよ。

そういうところにまで歴史を見出すとは……
ほんと、今岡先生らしいですよね……

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登場人物紹介

今岡英二公式ツイッター(一日トリビアつぶやき中)



■今岡英二(天使)


最近「小説のキャラよりキャラが立っている」といわれる、同コラボノベルの作者。

無駄に行動力だけはある。

なお、この絵は作者がバンド活動をしていたとき、知り合いのイラストレーターが作成してくれたお気に入りの一枚。現在はバンド活動から離れ、体重が増加したため、ここまでかっこよくはない。


「上京して十数年経つが、広島弁が抜けりゃあせんのう(笑)」とは本人の弁。


■今岡英二(悪魔)


悪魔イラストの割りに、天使と対立しているわけでもない。広島生まれ・広島育ちの根っからのカープファンだが、近年カープが人気しすぎて、年一回の帰省でも現地で野球が見れないのが最近の悩み。


「ええんじゃ。昔の貧乏な頃のカープに比べりゃあのう。みんなが見に来てくれて、潤うようになったカープがありゃあ、それだけでええんじゃ……」とは作者のコメント。

■今岡英二(お守り)


歴史オタク・読書オタク・漫画オタク・勉強オタクな今岡英二の変態担当、作家・ライター担当。自身の小説キャラを辟易とさせるなど、悪魔よりも悪魔っぽい存在。


「なんでそんなことまで知っているんだ」「ふつうそこまで知りませんよ」とキャラにつっこまれても、「勉強したけえの」と言えば大抵のことは許されると思っているなど、余計に性質が悪い。

ニコル・クロムウェル(Nicol=Cromwell)


「Dr.ニコルの検死FILE」の主人公。

作者・今岡英二のつっこみ役A。紳士然とした丁寧な語り口だが、作者に対してはたまに辛辣な物言いを吐く。たぶんストレスがたまっているんだね。

武松(ぶしょう)


「大宋退魔伝」の主人公。

作者・今岡英二のつっこみ役B。そろそろ「左近ちゃん 見参!」の三成にでもつっこみ役を代わってもらいたいと思っているが、同作のキャラアイコンが家紋なので却下され、最近やさぐれ気味。きっとストレスがたまっているんだね。

石田三成(いしだ・みつなり)


「左近ちゃん 見参!」の主人公。

同作ではいいツッコミ役を果たしていたが、作者の「キャラアイコンにしっくりくるのがなかったけえ、家紋にした」という一言のせいで、ここでは活躍の場を与えられないという憂き目に遭う。ごめんな。


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