75話② 【変】愛宕神社の「出世の石段」

文字数 1,357文字

で、タイトルには「出世の石段」とありますが、

これってどういうことなんですか?

ああ、これか。

これは、愛宕神社の正面の坂、通称「男坂」がそう呼ばれとるけえなんよ。

なんか謂れがあるのか?

おう。

1634年(寛永11年)、三代将軍・家光が

将軍家の菩提寺である芝の増上寺に参詣したんじゃが、

その帰りにこの愛宕神社の前を通りかかったんよ。

こんな感じの風景じゃったんかのう。

で、そのとき、愛宕山の満開の梅を目にして、

「誰か、馬にてあの梅を取ってまいれ!」

と命じたんじゃ。

無茶ぶりにもほどがあるだろ……

ほうじゃろうな。

なんせこの石段、傾斜角度は45度

一段が約20cm以上、階段自体も86段はあるという代物じゃけえな。

ちなみに実際、上から撮った感じではこんなもんじゃ!

これ、落ちたら大怪我じゃないですか!?

大怪我で済めばええじゃろうな。

馬上から落ちたら、下手すりゃ死ぬで。

そりゃ、だれもやらねえだろ……

うむ。

で、誰もなかなか名乗り出なかったんで、

家光もみるみる機嫌が悪くなったそうな。

しかし、その怒りが爆発しようかというその瞬間、

突如、そこに名乗り出るものがおったんよ。

誰だっ!?

それは四国丸亀藩の家臣で曲垣平九郎という侍じゃったんじゃ。

曲垣平九郎は丸亀藩の馬術師範役じゃったんで、

丸亀藩の名誉を一身に背負って挑戦したわけなんじゃ。

で、どうなったんですか?

彼の挑戦は見事成功!!

将軍・家光は、これとばかりに褒めにほめそやしたそうな。

「泰平の世に馬術の稽古怠りなきこと、まことにあっぱれ!」とな。


すげえ!!

以来、彼は『日本一の馬術の名人』と讃えられ、

その名を全国に轟かせたそうじゃ。

ちなみにそのときの梅がいまでも、こうしてあるそうな。

マジだっ!!
で、この坂もいつしか「出世の石段」と呼ばれるようになったんじゃ。

実際、その侍は有名になって出世もしたんでしょうから、

あながち嘘でもなさそうですね。

ほうじゃな。

で、これが実際にできるかどうか、

江戸時代以降もチャレンジした人が何人かおるんよ。

それに挑戦して成功したのは、現在までたったの10例。

いずれも馬術名人として歴史に名前を残しとるけえ、

やはり「出世の石段」いうのは、嘘じゃないいうことになろうてな。

ちなみにどんな人が成功してんだ?

さすがに10名全部は紹介しきれんが、

とくに有名なのは大正14年に成功した岩木利夫さんじゃな。

どういった方なんですか?

陸軍参謀本部の馬丁じゃったんじゃがな。

彼の愛馬・平形が8歳で廃馬(殺処分)となる決定がなされたんよ。

で、これにショックを受けた岩木さんは、

この「出世の石段」登頂に成功すれば殺処分されないだろうとふんで、

果敢にもこれに挑戦したんじゃ。

どうなったんだ?

むろん見事成功。

で、このことは開局したばかりのラジオ局でニュース速報として伝えられ、

下りの挑戦前には多くの人だかりまで出来上がったそうな。

また、この美談は昭和天皇の耳にも届いて、平形の殺処分は取り消し。

参謀本部将校用乗馬として余生を過ごしたんじゃと。

いい話ですね。

うむ。

馬と人の友情、かくあるべしといったところじゃな。

ほんとお前さん、馬が好きだな。

否定はせん。

競馬も好きじゃし、乗馬も好きじゃしな。


そんなわけで、馬に縁もある出世の石段、みなさんもぜひ一度愛宕神社に足を運んでみてつかあさい!!

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登場人物紹介

今岡英二公式ツイッター(一日トリビアつぶやき中)



■今岡英二(天使)


最近「小説のキャラよりキャラが立っている」といわれる、同コラボノベルの作者。

無駄に行動力だけはある。

なお、この絵は作者がバンド活動をしていたとき、知り合いのイラストレーターが作成してくれたお気に入りの一枚。現在はバンド活動から離れ、体重が増加したため、ここまでかっこよくはない。


「上京して十数年経つが、広島弁が抜けりゃあせんのう(笑)」とは本人の弁。


■今岡英二(悪魔)


悪魔イラストの割りに、天使と対立しているわけでもない。広島生まれ・広島育ちの根っからのカープファンだが、近年カープが人気しすぎて、年一回の帰省でも現地で野球が見れないのが最近の悩み。


「ええんじゃ。昔の貧乏な頃のカープに比べりゃあのう。みんなが見に来てくれて、潤うようになったカープがありゃあ、それだけでええんじゃ……」とは作者のコメント。

■今岡英二(お守り)


歴史オタク・読書オタク・漫画オタク・勉強オタクな今岡英二の変態担当、作家・ライター担当。自身の小説キャラを辟易とさせるなど、悪魔よりも悪魔っぽい存在。


「なんでそんなことまで知っているんだ」「ふつうそこまで知りませんよ」とキャラにつっこまれても、「勉強したけえの」と言えば大抵のことは許されると思っているなど、余計に性質が悪い。

ニコル・クロムウェル(Nicol=Cromwell)


「Dr.ニコルの検死FILE」の主人公。

作者・今岡英二のつっこみ役A。紳士然とした丁寧な語り口だが、作者に対してはたまに辛辣な物言いを吐く。たぶんストレスがたまっているんだね。

武松(ぶしょう)


「大宋退魔伝」の主人公。

作者・今岡英二のつっこみ役B。そろそろ「左近ちゃん 見参!」の三成にでもつっこみ役を代わってもらいたいと思っているが、同作のキャラアイコンが家紋なので却下され、最近やさぐれ気味。きっとストレスがたまっているんだね。

石田三成(いしだ・みつなり)


「左近ちゃん 見参!」の主人公。

同作ではいいツッコミ役を果たしていたが、作者の「キャラアイコンにしっくりくるのがなかったけえ、家紋にした」という一言のせいで、ここでは活躍の場を与えられないという憂き目に遭う。ごめんな。


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