第649話 筆記具

文字数 595文字

 筆記具には愛着を感じる。ある程度、自分の生活してきた時代のせいかも知れない。子供のころに自分の持てる、自分だけの愛着品は少なかった。その中での一番は万年筆ではなかっただろうか。いい万年筆に出会えばいい字が、うまい文章が書けるのではとワクワクした。当時、日本製はまだまだ性能的にも機能的にも未熟だったような気がする。たぶん親父かおふくろに買ってもらったと思うけれど、最初になるほどと思わせてくれた万年筆はモンブランだった。キャップの先端のモンブランの象徴がかっこよかった。国産のパイロットやプラチナという万年筆とは比べようもなかった。国産のものよりぐんと滑らかに字がかけたし、インクの出もスムーズだった。





 ボールペンはパーカーで始まった。国産のものをはるかに凌駕する書き味だった。少し自分には字自体が太く感じたが、それは英語をスラスラと書くにはちょうど良かったのだろう。その次にはシャープペンシル。学生が一番使う筆記具はシャープペンシルだっただろう。ポリポリと良く折れるシャープに始まって、今では良くここまでやるもんだという驚くべき商品が文具売り場に並んでいる。いつも同じ太さの字が書ける仕組みを考えた人は日本人以外には考えられない。






 そんな自分の愛着の文具品を思い出させてくれる本に出会った。「ツバキ文具店」、何と楽しい、はるかの昔の思い出を招いてくれている。ガラスペンを買ってしまった。
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