第223話 むくつけき男たち

文字数 586文字

 いつもの将棋の終了後、呑み会を近くの居酒屋で行なった。日ごろ難しい顔をして将棋を指す連中を誘い出すのは勇気のいることだった。20数年続く将棋クラブで、いまだに呑み会や忘年会などをやったことはなかったらしい。自分のようなまだ4、5年の新参者がと思ったけれど、ここは誰かが動き出さないと、という気持ちがあった。

 この人とは呑みたいな、話をしてみたいなと思える人が四人集まった。もう一人の参加予定者が運悪く白内障手術でパスとなった。白内障手術の前後は酒は厳禁となることは、経験済みだ。次回には来るだろう。

  (実際の風景ではありません)


 むくつけき男も酒が入ると、一気に変身する。何度も経験したことがやはりここにもあてはまった。こんな会を開きたかったとか、次は新年会だの、同時代を生きたおじいさん達が一発で意気投合した。特に、みんな今回のコロナ騒ぎで、こういう皆で集まって酒を呑むこと自体も遠ざかっていたのだ。みなが喜んで酒を酌み交わすことは嬉しいことなのだ。
 呑めば口も滑らかになり、人柄や出身、今までの人生のあれこれが見えてくる。一人は高校の10年先輩であり、もう一人は同じ関学の後輩だった。もう一人は飛騨高山出身の人だった。男同士の壁というものは、ベルリンの壁ほどに鉄壁なのだ。でも、崩壊は一気に崩れ去る。
 呑み放題で2980円也は、まことに有益な一日を演出してくれた。



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