第606話 勝者

文字数 439文字

 王座挑戦者決定戦を見た。最終盤で二転三転したが、最後に勝利をものにしたのは藤井七冠だった。159手という長丁場だった。
 こういう将棋、レベルは全く違うが我がヘボ将棋の世界でもよく起こることだ。いつも煮え湯を飲まされるのは弱者だ。そんな思いを何百回やったことだろう。終盤の乱戦になると、局面を冷静に見れなくなり、わけが分からなくなってしまう。時間もない。焦る、焦りまくる。相手は局面を複雑化してくる。そして大きなミスをして、大逆転を食らってしまうのだ。そんな一戦だったような気がする。終局後に豊島が言っていた。「間違わなければ、自分にも勝つチャンスはあった」と。しかし、これはどこまでいっても敗者の言であり、勝敗の行方はどこまでも強者に傾くのだ。



 その時の勝者は、いつも冷静な強者に微笑んでいるようだ。あのWBC、イチローが打ったセンター前に抜ける一本のヒット、今年のWBC、大谷翔平が優勝を決めたトラウトに投げたあのえぐいスライダー、誰もが勝者の何たるかを示したシーンだった。



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