第393話 試着室の鏡

文字数 430文字

 試着室の鏡に映った自分を見て、正直ゾッとした。今の自分はこんな姿を世間に晒しているのだと改めて実感した。自分では、もう少しはマシだと思っていただけに、現実は予想以上に哀れなものだった。
 昨日、イオンへ家内と礼服を見に行った。家にあるものでは、もう無理だと思っていたからだ。自分の年を考えると、もう自分の周りで何が起こっても不思議ではない歳になっている。その時に、あわててお茶を濁すことはできない。それではあまりに失礼にあたる。そういう思いがずっとあった。前回の下見で、適当なものがあったので、今回は家内をつき合わせて決めようと思ったのだ。



 それにしても、鏡というものは自分の現実を手荒く見せるものだ。平素、鏡をじっくりの見ない自分にとって、予想以上に暴力的なものだった。こんなことを繰り返しながら、年老いた自分を認識させられていくのだろう。
 何とか自分のサイズに合うものがあっただけでも、儲けものと思うしかないのだろう。お直しをして、手元に届くのは十日後だ。



ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み