第276話 「天才」

文字数 467文字

 石原慎太郎の「天才」を読んだ。田中角栄を政治の天才と評しての著作だ。金権政治の打倒を展開した石原にしては意外に思えるが、政界を退いて後の、人間として、政治家としての大所高所からの視点で書かれている。

 石原は、日本を戦後の繁栄、大躍進へ導いたのは、田中角栄あってのことだと認めているのだ。日本列島を大改造し、中国との国交を正常化した豪腕は、彼にしかできなかったと断じている。金権政治と批判されたが、方法は如何な形であれ、結果こそが何よりも国にとっては最重要だと言っているのだ。
 彼自身も、都知事として東京の財政再建を果たし、世界の誇る大都市、東京をつくりあげた。二人に共通して言えるのは、国家を都を大発展に導いたという一点に尽きる。
 人間を個人としてみても、心のうちの善と悪が共存しているし、清廉潔白だけでは生きることはできない。人間が行なう政治にあっても、同じことが言えるのだ。現況の世界を見ても、正当、公正がどこに存在するのだろうか。
 そういう意味では、田中角栄を退陣に追い込んだ、文春砲の元祖たる立花隆はどう評価されるのだろう。



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