第434話 「定年ゴジラ」重松清

文字数 415文字

 先日借りてきた4冊の本のうち「定年ゴジラ」を三日で読んだ。重松清の初期の作品だが、この人は上手い、賢い小説家だと思った。読み終えるまでに三度涙することができた。読者を喜ばせる業師なのだと思う。


    尾道にて

 ニュータウンに縁あって集う定年組の悲喜こもごもの話だ。自分の年齢よりは少し下だけれど、昭和を生きた人間としては全く同じ。笑わせてくれる、考えさせてくれる、思い出させてくれる、泣かせてくれるのだ。感情を揺さぶるコツを熟知している。この感情を揺さぶる方法を、NHKの添削講座の講師に質問したことがある。何かもう一つピント来ない答えだった。感情を揺さぶることが出来たならば、人生での人間関係も営業も、お金持ちになることも、女を口説くことも簡単にできるかもしれないのだ。
 重松の本が愛される一番の理由は、この感情の揺さぶりなのだ。これが、あの「とんび」が何度も映像化される理由。人の心の揺らぎを、彼はどこで勉強したのだろうか。



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