第103話 将棋とコンピューター

文字数 664文字

 2017年、将棋はコンピューターに降参した。その前にチェスや囲碁もコンピューターにギブアップしていた。賢明にも、将棋界はコンピューターとは戦わないと早々と決めた。将棋界は賢明な戦略を取ったのだ。もし、いつまでも棋界がコンピューターに逆らっていたら、今の繁栄はない。共存を考えたのだ。
 将棋の二冠である豊島竜王は、コンピューターを人よりも早く自分の将棋に導入し、今を築いた。仲間と勉強会をやるよりも、コンピューターに教わるほうがいいと思ったのだ。
 そこに将棋の天才、藤井聡太が現れた。天才といえども、コンピューターを早々と取り入れた豊島には勝てなかった。対戦成績が1勝7敗という散々なものだった。そこで天才は考えた。コロナ自粛期間にコンピューターを導入した。結果、次から次へと先輩棋士をなぎ倒し、二冠達成を果たした。
 あとは豊島竜王を打破するだけだ。そのために天才は最新鋭のコンピューターを自作した。コンピューターの性能は、CPUとソフトの合算だ。より早く、適確に次の一手を探し出し、それを自分の頭脳に叩き込んだほうが勝利する確率が高い。豊島と一回り違う年齢の柔らかき頭脳は、天才をよりパワーアップさせることになった。コンピューターとの付き合い方は、棋士にとって欠かせない重要なテーマになっている。一昨日の王位戦は、それを証明する一戦だったような気がする。しばらくは天才の天下が続きそうだ。
 明日は、将棋とコンピューターとのきっかけになった叡王戦がある。叡王戦のタイトルを藤井が豊島からタイトルを取るかどうかの、楽しみな一戦だ。



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