第338話 洗車

文字数 546文字

 元来が無精者の自分なので、あまり車を洗車したことがない。特に最近は、二年に一度の車検で、洗ってもらうことを当たり前としていた。そのために、当初から汚れの目立たないシルバーグレーにしている。
 しかし、来週のグランドゴルフ大会に人を乗せねばならなくなった。いくら無精者だとはいえ、他人様を乗せるのにあまりにも失礼だ。マンション下に洗車のための水道があり、住人がたまにはそこで洗車しているのを見かける。なので、そこで洗車も考えたが、それには最低限、洗車ブラシやホースも必要だ。たった一回のためにそれらを買うのも馬鹿らしい。



 ならばと、動きの鈍った頭をフル動員して考えた。そうだ、ガソリンも給油ボタンも点滅しているので、どこかのGSへ入って洗車してもらおうと考えたのだ。とても自然であたりまえの発想だ。昨日は近場へワラビ取りに出かけたので、帰りのGSに飛び込んでガソリンを満タンにして、大きな顔をして洗車のことを聞いてみた。セルフ洗車というものがあり、そこまで誘導してコインも代わって入れてくれ、アンテナも収納してくれた。水洗いだけなら300円です。車内に取り残され、自分の車が動いているような錯覚にとらわれながら無事完了。車は久しぶりにピカピカになった。ビール一杯のお金が、すごく生きた気がした。



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