第92話 気楽に出歩ける日

文字数 538文字

 コロナ来襲以来、ほんとうに出歩くことがなくなってしまった。住まいのある川西というところは誠に便利なところで、大阪、神戸、京都へのアクセスが抜群なのだ。一時間あればほぼ着いてしまうので、月に二回ぐらいはそのどれかに遊びに出かけていた。
 なのにだ。あれほど出歩くことが好きだったのにぱったりと途絶えてしまった。憎っくきコロナ、こいつはいまだに居座っている。なんて奴だ。それどころか、正体を変身させ、パワーアップ中だ。世界中の賢者たちよ、特効薬を一日も早く作ってくれ。
 この間に出かけたところは、たったの三か所のみ。感染状況の一段落をめがけての神戸の湊川商店街の雑踏のにおいを嗅ぎに行ったこと。二つ目は、コロナ来襲の半年前から予約してあった兵庫の海沿いの竹野海岸への家族12人での旅行。これも、ひやひやものでぎりぎりまで決行をためらったが、家族全員が楽しみにしていたものを断念するわけにはいかぬ。もう一つは、今年の三月の津和野行だ。前々から安野光雅さんの絵が好きだったのだが、惜しくも亡くなられたのを機に、美術館へと矢も楯もたまらず家内と出かけたのだ。観光名所の津和野は、閑古鳥が鳴いていた。
 気楽に出歩く日はいったいいつやってくるのだ。そんな思いの人たちが世界中に溢れている。



 
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