第80話 風よあらしよ

文字数 417文字

 村山由佳の書いた「風よあらしよ」を読んだ。約700ページの婦人解放運動家、伊藤野江の伝記小説だ。最近はどうも長編を読むのがつらくなってきた。年のせいだろうか。
 それにしても、気性の激しい女性がいたものだと思う。主人である大杉栄、平塚らいてう、与謝野晶子、荒畑寒村、甘粕正彦など名だけは聞き知った人が多く登場する。アナキストであり、自由恋愛主義者の大杉栄をまともに受けいれる女性は、伊藤野江しかあるまいと思わせてくれる。
 この大杉栄という人もすごいと思った。獄につながれるたびに一つの外国語を勉強したとか。6か国語もマスターし、あの「ファーブル昆虫記」や「種の起源」も訳している。あまりにも政府にとっては邪魔になる存在だったのだろう。野江と共に逮捕され、即日虐殺されてしまう。野江28歳、大杉38歳の短く激しい人生だった。
 瀬戸内寂聴も伊藤野江のことを書いているけれど、この二人の小説家にはすごく似通ったところがあるのは偶然だろうか。


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