第339話 麻痺

文字数 637文字

 凄く大きな刺激に対しても、人間は時の経過とともに麻痺していくものなのかもしれない。2月24日にロシアによるウクライナ侵攻があってから、もう50日を経過した。当初は、この侵攻の火の粉が我が国にも及ぶかも知れないと、恐れた人が多かったのではないかと思う。しかし、ロシアは予想外のウクライナの抵抗に合い、プーチンの心中は複雑な状況にあるようだ。
 侵攻からしばらくはテレビやネットにかじりついて、戦況を注視していたがいつまでもそのニュースばかりでは疲れるし、しんどくなってしまう。徐々にその刺激に麻痺し、一般市民が爆撃を受けたり、虐殺のニュースにも一喜一憂しなくなってしまっている。人間とはまことに勝手なものなのだ。

 ふと思いだしたことがある。あの阪神大震災のおり、その直撃を受けた自分は、直後の一週間は生きた心地がしなかった。50メーター先の小学校は避難者でいっぱいに膨れ上がっていた。震災関連の報道は日増しに激しくなり、死者がいったいどれほどまで伸びるのだろうかと、その数値に釘付けにされた。
 しかし、徐々に落ちついてくると、この被害の範囲は武庫川を境に大きく変わっていることが分った。辛抱たまらず、震災から10日後に家族で十三へ風呂を浴びに行った。被災者は無料だったのだ。駅を降りたところでの、大いに驚いた経験が忘れられない。それは駅前のパチンコ屋の、あのチンジャラの大騒音に違和感を感じたことだった。ここには震災はやってきていなかった。まったくのよそ事がここにあったのだ。



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