第631話 「やっとお風呂に入れます。」

文字数 470文字

 「やっとお風呂に入れます。」という記事があった。能登地震発生から約一週間、自衛隊が簡易の風呂を用意したのだ。この記事を見てあの二十数年前の阪神大震災のことを思い出した。西宮であの地震をまともに食らった自分たち家族も、一週間ほどは風呂に入ることができなかった。水道もガスも止まっていたからだ。そんな時テレビで、十三の銭湯が被災者に無料で風呂を開放しているというニュース。



西宮北口までは電車が来ていたので、いても立ってもたまらず、翌日に家族で出かけた。武庫川までの景色は地震で一変していた。なのに、武庫川を渡ると全く何もなかったように普通に見える。武庫川が驚くことにあの地震波を緩くしていたのだ。そして、十三に降り立った時のあのチンジャラジャラというパチンコの音にはびっくりしてしまった。少し腹立たしさえ感じるものだった。ことちら生きるか死ぬかの最中、このパチンコの音は何なのだと。被災地とそうではないところの落差はいつもそうなのだろう。
 しっかりとからだを洗い、頭を二度も洗髪し、久しぶりに入った十三の食堂でのビール味は今でも忘れられない。



ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み