第107話 恐るべき若者

文字数 433文字

 先ほど朝の9時から、将棋王位戦第五局の二日目が始まった。場所は徳島県にある渭水苑という、見るからに一流の料亭旅館で行われている。誰もが気軽に行けるところではなさそうだ。将棋のタイトル戦は、棋界の頂点を決める場所として新聞社や協賛の各社の応援もあって、すべて環境や格式を十分に考えて場所が決められるようだ。
 一人の若者の出現以来、将棋人気が高まりテレビや各種のメディアに取り上げられることが急激に増えた。タイトル戦の模様は微に入り細に入りテレビ中継される。対局場所の案内に始まって、バラエティある解説人の戦況解説、昼食や夕食、おやつの紹介、終局後のインタビューなどなど、長時間の勝負を飽きさせない工夫が満載だ。将棋は指すものと思っていたのに、最近では<観る将>や<読む将>と呼ばれる新しい将棋のファン層が出現している。
 これらの流れを誘導している若者、藤井聡太は若干19歳。この恐るべき若者に緊張や恐怖の様子は見られない。
 時代は恐るべき若者によって塗り替えられる。


ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み