第91話 一瞬の平和

文字数 408文字

 オリンピックの閉会式を見た。世情不安やコロナ禍でのオリンピックが無事に終了したことに、何故かほっとした。もう残された自分の人生の中で、自国でオリンピックが開催されることはないだろう。
 オリンピックの閉会式には、いつも思うことがある。四年に一度のことではあるが、そこには決まって一瞬の平和が訪れるからだ。
 開催国には世界各国のアスリートが集い、真剣勝負が繰り広げられる。金メダルを獲った人、惜しくも銀メダルや銅メダルに終わった人、メダルを獲れなかった人、実力を発揮できなかった人、実力の差を思い知らされた人、さまざまな戦いを終えたアスリートたちが、競技を終え一堂に会する。
 その場には戦いを終えた満足感、充実感にあふれ、お互いの健闘と再会を約束する。戦いのないところには自然に平和が訪れるのだ。そこには、男女、体格、人種、国柄などの差が存在しないように見える。平和を脅かすだろう人間の負の部分が存在しないからだろう。



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