第364話 御侍史

文字数 432文字

 先日、いつもの病院が市民病院にくら替えするため、地元での医者への変更を依頼してきた。調べて、近場の医者を選んだところ、そこへの紹介状が送付されてきた。紹介状には、「○○先生 御侍史」との宛名書きの封筒が入っていた。
 久しぶりに見た呼び名だった。介護関連の仕事に退職前の10年間やっていたので、この御侍史という言葉は知っていた。医療分野では、医師への宛名書きに使う言葉なのだ。ものものしく、古めかしく、時代遅れと言ってもいいような言葉で「おんじし」と読む。○○先生のあとにまだ御侍史と、ご丁寧にも医師は奉られる存在なのだ。
 この意味を詳しく説明すると、次のようになる。「私ごときものが、先生に直接お手紙を書くなんてめっそうもないことなので、先生の秘書様(御侍史)宛てにもの申し上げます」という意味なのだ。



 今どき、国会の代議士でも、弁護士でも、ただ先生と呼んでおけば事足りるのに、このくそ丁寧な(御侍史)とは、何と言う時代錯誤なのかと思ってしまう。


  京都市美術館

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