第255話 自由と不自由

文字数 466文字

 自由とはやっかいなものだと思う。特に、我々のような高齢者で元気なものにとっては、ほぼ毎日が自由気ままな中にいる。制約はほとんどない。探すとすれば、二ヶ月に一度の定期健診を兼ねての常備薬をもらいに行くぐらいのものだ。その他には何もない。
 趣味のお絵描きや将棋、グランドゴルフ、テレビ観戦、読書にしても、別にやらねばならないことではない。ひまつぶしのお道具なのだ。でも、これらの趣味がなかったとしたら、心底ゾッとすると思う。途方にくれ、気が狂ってしまうかもしれない。言わば、自由を趣味という制約によって不自由にしているだけなのだ。不自由があるから、毎日が成り立っているのかもしれない。



 現役のときは、自分も含めて誰もが自由と金が欲しいと願っただろう。今、その自由とわずかばかりに金を得てみると、またもやせっかくの自由を無理矢理に不自由へと埋没させている。何ということなのだ。
 しかし、もし突如病気や事故に見舞われたら、一転して違った意味での不自由に強制されることになってしまう。それは恐ろしいことだ。人間とは何と不自由な生き物だろう。



ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み