第237話 返信の賀状

文字数 566文字

 年賀状を出すときに、いつも決まって考えることがある。もうそろそろの年齢だし、なるべく少なめにしたいと思ってしまうのだ。一応のリストがあり、去年は来たとか、今年はパスしようかとの判断に迷いながら選別する。



 リストアップされた中で今年はパスした中から、三枚の賀状が届いていた。一枚は中学の同級生であり、ホテルの料理長をしていた彼だった。震災後の店舗再建を手伝ってくれた。ステージ4のすい臓がんが見つかったが、元気に人生を楽しんでいるとのメッセージがあった。
 二枚目は、その店舗のおりに、通っていたプールで知り合った気のいい友人だった。呑み会にゴルフにといい思い出ばかりが残っている。三枚目の友人は、バブルが崩壊し、会社を整理した後、30年ぶりにカムバックした会社で自分を快くバックアップしてくれた人だった。



 三人とも当時は凄くお世話になった人たちばかりだ。自分の一番どん底の時に彼らは助けてくれた人たちなのだ。こんな人をパスする自分が少し嫌になった。自分の人への判断はその程度のものかと攻められているような気がした。
 やはり、最終リストにあるものぐらいはずっと出し続けるべきなのだろうか。分からない。ここにも自分の課題である<こうあるべき>の判断があるようだ。新年早々から、またもや難題がやってきた。
 早速、すぐに返信の賀状を出した。



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