第467話 「父の詫び状」

文字数 501文字

 向田邦子のエッセイ集、「父の詫び状」を読んでいる。この人は本当にうまい文章を書く人だと思う。無駄がない、てらいもない、はだかのままの心のうちが文として刻まれている。経歴から考えても、文章修業のいろはを、実践の中から学んだのだろうことがよく伺える。
 駄文を垂れ流す自分が恥ずかしくなってくる。一編でもこのような文章が書けたらと願うしかない。いみじくも、久世光彦が評している。「あの人は、あり過ぎるぐらいあった始末におえない胸の中のものを、誰にだって、一つだって口にしたことがない人だった。では、どのように始末したのだろうか、小説ではなかったか?小説の中に悔しい向田さんがいる。泣いているあの人がいる。」



 様々な本を読んでいると、人間同士が意外なところでつながっている。それがけっこう楽しいことでもある。自分だけが知ったちょっとした秘密を探りあてたようで得をした気分になる。阿川佐和子の父である阿川弘之の奥さんは、谷川俊太郎と遠縁だった。遠藤周作は、伯母の影響でカトリック夙川教会で洗礼を受けていた。ここの教会は写真を撮りたくなる建物で、何度も車を止めてシャッターを押したことがある。


   馬篭から妻篭へ

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