第270話 一本の線

文字数 663文字

 水彩、自分では初めての大作(?)に挑戦している。下書きの準備を終えたのだが、このまま進むのに躊躇していて、下書きをすることを思いついた。で、現在、九分の一を切り取って、本番同様の下書き中だ。そこで気付いたことがある。自分には重要なことで、今まで知らなくてやってきていたことで、大きな気付きがあった。専門に絵を習ったことがない自分にとっては、このことは絵の基本だと思うのだけれど、知らなかったことなのだ。



 水彩は下書きに鉛筆デッサンをすることから始めるのだが、この鉛筆の線の処理の仕方にいつも悩んでいた。この鉛筆の線は、対象の形であり、物と物との境界線でもある。でも、実際には存在しない。そんな厄介な奴なのだ。この線が水彩では、一つの味となったりすることもある。といって、あまりにはっきりと線が残ってしまうと違和感がある。
 なので、自分は逆にこの線をインクペンで強調してペン画としていた。実際には無い線なのだ。無いものを書いていることに少し疑問が残ったままだった。でも、今回の試し書きで一つ勉強ができた。境界線ぎりぎりまで着色して、乾いた後に練り消しゴムでその線を簡単に消せるのだ。消した後に、隣の色を着色すれば問題は解決する。線は無くなってしまう。たったそれだけのことだが、絵を専門に勉強する人にとっては至極当たり前のことだけれど、この歳にして初めて気付く驚きだった。
 ただ考えてみると、これが絵の描き方だという王道があるわけではない。でないと、ゴッホやピカソの絵は成立しない。彼らの絵は、実際に無い線で溢れているのだから。



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