第343話 夜の夢

文字数 459文字

 一昨日、夜中に家内が大声出して「お父さん!」、「お父さん!」と叫んでいる。飛び起きて、隣の部屋に駆けつけてどうしたのかと声をかけると、泥棒が入ってきた夢を見たという。二人で生活するようになって初めてのことだ。以前にもそんな経験はない。こちらは身体のどこかに変調を来たしのかとあわてたのに。翌朝に話を聞いたけれど、馬鹿馬鹿しい夢の世界の話だ。普通では考えられないことが、夢の世界ではありえるのだろう。



 もう自分は当たり前のようになっているが、夜の夢で起こされるのか、尿意で起こされるのかが分からないようになっている。一時間、一時間半、二時間の短編の、どうしようもない夢に起こされてトイレに行くのが習慣になっている。まったく何の楽しみも、記憶にも残らない夢ばかりが当たり前になっている。朝はいつも頭がボーとしている。それを取り返すかのように、午後の昼寝はみごとに気持ちがいい。熟睡の一時間が宝物だ。
 まことに残念なことだけれど、もう淫夢を見ることもない。もうそんな夢をみる力もないのだろうか。


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