第454話 サイフォンコーヒー抽出顛末記

文字数 635文字

 待望のコーヒーサイフォンが到着した。もちろん事前に薬局で燃料用アルコールも調達しておいた。万全の態勢を整え、説明書どおりにコーヒー抽出を開始する。
 封を切ってなかった少し高級なコーヒー豆をミルで細かめに粉砕。上ボールに投入する。下ボールに伊丹の丹水(二週間に一回もらいに行っている酒造り用の水)を分量分入れて、アルコールランプを点火。



 ここで予想外のことが起こる。一向に水は沸こうとしないのだ。当たり前のことだ。こんなチロチロの火では日が暮れそうだと気づく。次回からは事前に湯を沸かして置かねばならぬ。(説明書にも水か湯と書いてあった)ただ、今回は初めてなので、イライラしながらもじっと我慢。待つ事10数分、甲斐あって、気泡がボールの下から湧き上がり始める。上ボールと下ボールを合体。なるほど、気圧の変化によって下で沸かされた湯が上へと吸い上げられる。まるで、はるか昔の学校での化学実験を思い出す。手順どおり、吸い上げられた湯とコーヒーをそろりと攪拌。アルコールランプ消燈。化学の法則は裏切らない。気圧が下がり、下ボールに出来たてのコーヒーが舞い降りた。
 何事もやってみて初めて分かることが多い。これは完全にコーヒーを沸かすというパフォーマンスだったのだ。サイフォン珈琲店の意味がよく理解できた。いつもやっている、コーヒードリッパーで抽出している作業をより複雑化したしているだけのことだったのだ。
 でも、何だか今日のコーヒーは、気のせいだろうか、いつもより旨く感じた。



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