第517話 緊張

文字数 580文字

 藤井聡太竜王と挑戦者広瀬章人との竜王戦第一局が始まった。解説者が勝負の中での緊張について話をしていた。というのは、藤井の姿に緊張している気配が見られないからだ。彼はいつも落ちついて見えるし、駒さばきも安定している。年齢に似合わず、いつも堂々としていることに驚いているのだ。
 仕事であれ、スポーツ、勝負ごと、何であれ、緊張を強いられる場面が必ずある。その局面にどう対応するかは、人生の大きなポイントだと思う。自分にも、仕事の大事な局面での緊張感には、大いに悩まされた経験がある。


   柳生街道

 あの強者、羽生でさえも年齢を経て、大事な局面での駒を持つ手が震えることが話題になった。緊張はからだの抹消に現われるという。あのジャンボ尾崎も、初の日本オープンゴルフ、勝利への最後のパットに手こずったのは有名な話だ。そういう意味では、藤井にもそういう時期が来るのかもしれないし、来ることがあって欲しいという変な願いもある。でないと、あまりにも人間離れしていて、憎たらしくなってしまうではないか。
 負けること、弱みを見せたくないこと、挫折すること、失敗すること、かっこよく自分を見せたいことなど、様々な経験の中から緊張は生まれる。
 そういう意味では、藤井はまだ本格的に負けてはいないのかもしれない、八割を超える勝率がそれを物語っている。昨日、藤井は広瀬に負けてしまった。



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