第354話 記憶

文字数 558文字

 昨日のことがだんだんと思い出せなくなっている。確実にそうなりつつある。日々の日記を書いているのだが、昨日を思い出すのに苦労することが増えている。日記を書かなければその必要もないことだけれど、習慣上それをストップすることは出来ないだろうし、ストップする気もない。ただ記入する内容を思い出せないと、何だか少しストレスを感じるし、老化を感じてしまうのだ。そのためのメモや手がかりが必要になったということか。
 日記を付けない人も多い。その人たちはどう考えているのだろう。昨日を思い出す必要があるの?って、問われたら返答のしようもない。昨日を覚えておかなければならない義務もないし、必要性というものは、人によって異なるということだろう。うちの家内はそちらの方だ。でも、過去のことは自分よりは良く覚えているほうだ。自分のまったく記憶にないことをきっちりと記憶している。そうしてみれば、あまり日記を付けることの意味はないのだろうか。その個人の考え方、生き方の違いかもしれない。

 藤井が叡王戦第一局、危なげなく勝利した。棋士たちの生命線は記憶だろうことは確かなことだ。宙を向いたり、頭を抱えたり、扇子をパチパチ鳴らしたりして、記憶を呼び覚ましているのだろう。いくら優れた棋士でも、年齢に伴うこの記憶力の減退に手を焼いてしまうのだ。


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