第496話 「故郷」

文字数 496文字

 水上勉の書いた「故郷」を読んでいる。500㌻を超える大作の新聞小説だ。福井という田舎の様子が事細かに書かれており、特に田舎の家族と、都会へ出て行く兄弟姉妹たちの関係が何となく理解できた。父は三男坊で、単身大阪へ出て頑張った。しかし、田舎の母や長男には全く頭が上がらなかったわりには、けっこう田舎思いだったことが覚えている。
 中でも、「たわけもの」と言う語源になるほどと頷けた。田を兄弟に分けて、身代をつぶしたもののことで、だからこそ兄弟には財産を与えることを拒否したらしい。そういう意味では親父は偉かったのだろう。父は田舎思いの癖に、極端に田舎に帰るのを嫌った。その理由も何となく理解できた。


    霊山寺バラ園にて

 福井は自分が戦後すぐに生まれただけで、ほとんど何も知らない。生家へ帰ったことも数度あるだけ。でもこの小説で福井の田舎の成り立ちが少しは分かって嬉しい。貧乏県を何とかするために、反対を押し切って原発を誘致した。大阪は、その原発の電気を大量に消費しているのだ。そのお陰で今は裕福な県になっている。田舎には田舎なりの事情があるのだ。それは、全く一つの家の内となんら変わりはない。



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