第５９２話　名人戦第四局

　両者にとって重要な名人戦の第四局を制したのは藤井聡太だった。この対局にどうしても勝ちたいと強く意識したのは渡辺名人だったに違いない。負けるとカド番になる。それからの三連勝での逆転勝利の可能性はほとんどない。そのことを彼は充分すぎるほど知っていた。



　ただいつも感心するのは、藤井聡太の番勝負での負けた後の強烈な強さだ。生来の負けん気が爆発するように次の対局を制している。充分すぎるほどの対策と準備をしているのだろう。今回の対局も、渡辺はその強さの前に完全に反撃を封じられてしまった。だからこそ、両者多くの時間を残しての渡辺の投了となった。もう手も足も出ないくらいに打ちのめされてしまった。次戦にほんのわずかでもチャンスを残すためには、この早い投了は渡辺の意地だったのかも知れない。残念ながら新名人の可能性は予想以上に大きいだろう。



　　　羨ましいような両者のお昼ごはんです