第180話 小三治さん

文字数 539文字

 小三治さんが突然に亡くなられて、早一か月がたってしまった。その間、テレビの追悼番組やNHKの深夜便アーカイブ、ユーチューブに残された画像、そして落語を聴きまくった。
 亡くなられる数日前に図書館で借りてきた「どこらお話ししましょうか 柳家小三治自伝」を読み終えたばかりだったので、そのショックは大きかった。
 小三治さんは落語家と呼ばれるのを嫌った。自分は噺家だといつも自分に言い聞かしていたという話は有名だ。落語家が落伍者というイメージが嫌だったのだろう。そこには、プライドの高い両親に対するマグマのような反骨心があったからだろう。どうやら人間は、反骨心が強ければ強いほど人として大きく成長できるようだ。



 
 以前にも書いたが、小三治さんの落語は、何度聞いても飽きない。これほど凄いことはないと思う。好きな落語家はいっぱいいる。米朝、枝雀、談志、志の輔、文枝、志ん朝、などなどとあまたいるけれど、何度か聴くうちに飽きてくる。小三治さんの落語は違うのだ。いつ聴いても新鮮で発見がある。深いのだ。あの間のすばらしさ、今回のまくらはどんなものだろうとワクワクしてしまう。観客は一緒になってそれを待つ。




 偉大なる国の宝が亡くなった。でも、彼の人生をかけて生み出した落語はいつまでも聴ける。



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