第127話 「藤井効果」

文字数 604文字

 若干19歳、藤井聡太というスーパースターの出現は、将棋界に「藤井効果」とでも呼べそうな大きな影響を与えている。
 まず一つ目は、羽生以来の将棋人気の沸騰だろう。将棋を始める子供たちが急増、読む将・観る将なる新しいファンの拡大など、将棋人口のすそ野を広げている。二つ目は、将棋界への計り知れない恩恵をもたらせている。棋士がメディアに出演する機会が増えている。同時に、女流棋士が広く世間に知られるようになり、白玲戦と呼ばれる本格的な女流タイトルが出現した。この棋戦は過去には考えられなかった優勝賞金1500万円という大きなもの。すべての棋士たちの懐具合にも大いに寄与しているのだ。
 もう一つは、ネット局のAbemaの知名度アップにも大きく貢献していることだ。当時四段の藤井聡太の炎の七番勝負は、Abema と将棋界を強烈に結びつける大イベントだった。以降、Abema将棋トーナメントは、全棋士に出場機会の門戸を開くと同時に、新しくAbema女流将棋トーナメントも開設している。
 昨日の叡王戦を中継したabema TVは、戦う前から藤井の勝利を予想していたかのようなはしゃぎぶりだった。タイトル奪取を前提としていたような祝勝会を予定していたのだから。
 それにしても、あの対局後の落ち着いたインタビューでの受け答えは、誰にでもできる技ではない。謙虚と気遣いが同居するあの姿は、わが国の政治家も学ぶべきだと思うのだが。



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