第155話 負けず嫌い

文字数 583文字

 悔しさは、将棋が強くなるための一番の薬かもしれない。自分のようなへぼ将棋でも、九分九厘勝てそうな将棋を最終盤の自分のミスでひっくり返された時の悔しさは、グジグジと翌日まで引きずってしまう。腹が煮えくり返るほど自分に腹が立つのだ。
 あの藤井聡太の強さの秘密は人一倍の悔しさにあると思う。小学生の時の日本シリーズの決勝で敗れて、表彰式での悔しさで涙をこらえられず、うちしおれた映像、谷川九段の気遣いによる引き分けを不服として母がなだめに入ったという話、棋士になりたての頃の自分のミスに腹が立ち、自分の膝を思い切りたたいたシーン、それらは藤井の悔しさを象徴するシーンとして何度も紹介される。
 棋士の世界は悔しさの上に存在するといっても過言ではないだろう。その悔しさは相手に負けたという敗北感より、自分のミスに対する悔しさだろうと思う。ミスをいかに減らすかがタイトルへ獲得への最大のポイントなのだ。
 先日の竜王戦第一局の敗戦に、豊島竜王は終盤での自分のミスが敗戦の原因だと答えていた。彼も超一流の負けず嫌いだと思う。でないと、棋界の最高峰である竜王を防衛できなかったはずだ。その自分のミスを潔く認めて、次戦に臨もうとする決意だったように自分には感じられた。負けず嫌いと負けず嫌いが正面からぶつかり合う最高峰の竜王戦、第二局はどのような展開になるだろう。今から楽しみである。



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