第310話 ビデオ判定

文字数 575文字

 宇良と横綱照ノ富士との一番、宇良に軍配が上ったが、ビデオ判定の結果、行司の指し違いということで惜敗した。宇良のかかとが付くのが、照ノ富士の足の出るより早かったというのだ。宇良を応援するものとしては、納得のいかない判定だと思った。確かにかかとの方が一瞬早かったが、照ノ富士の足も体も出ていたではないか。ただビデオだけで、時間をかけて協議することもなく、行事の差し違えとした。少なくとも、伊之助は行司の最高峰にいる存在だ。それなりの責任を持って軍配を上げているはずだ。それを何の相談もなく差し違えにしては、行司の権威も何もあったものじゃない。勘ぐれば、審判長は横綱の部屋の親方だ。ビデオ判定だけで短絡的に決めたと言われても仕方がない。
 勝敗を決める一瞬の判定には、時に疑わしきことがよくある。足が出るのと体が飛ぶのと同時と見てとか、体が死に体かどうか、髷に障ったかどうかとか、判断の分かれることが多い。要は、相撲協会にこれといった基準がないからだと思う。特に、立会いの是非における行司判定は、行司によって全く異なっている。全てのことが、あいまいの中でずっと続いているように感じられるのだ。度々起こる協会内での不祥事がなくならないのもそんなところに一因があるような気がする。
 宇良をこよなく応援するものとしては、一言、二言、言ってみたくなってしまうのだ。



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